このサイトは、職種を変えるキャリアチェンジ転職がメインテーマのサイトです。
しかし、職種を変える方法は転職だけではありません。
職種を変える方法はいくつかありますが、その中でも同じ会社で職種を変える「異動」を有効活用することをおすすめします。
私は転職3回、部署異動は6回経験していますが、そのうち3回の人事異動は自ら仕掛けた戦略的な人事異動です。
こんな方におすすめ
- 希望の部署に異動したい
- 異動が何年もできていない
- 人事異動は不公平だと思う
- 引き抜きを妨害された事がある
転職活動を真剣に行う人は多いですが、異動するための「異動活動」を真剣に行っている人は少ないように思います。
逆に考えると、競争相手が少ないため、戦略的に活動することができれば、異動するチャンスを劇的に増やすことが可能です。

Contents
転職活動ならぬ異動活動
私の周囲の同僚にも「異動したい」と言っている人は結構いるのですが、その多くの場合は自分の思うような「異動」を実現できずにいるのが現状です。
多くの失敗事例を見てきて思うのは、戦略があまりに乏しいことです。
特にこんな人は要注意です。
こんな人は注意
「異動したい」と周囲に言っている
今の上司に異動の相談をしている
社内公募制度・FA制度を利用している
たまに「自分がやりたいことを周囲に発信続けることが大事」という意見も見かけますが、はっきり言えばリスクの方が大きいです。
「周囲に発信する」のであれば相当戦略的にやる必要があるので、自分の会社・組織のことを相当深く熟知していない限り、おすすめできない方法です。
その点についても、この記事の中で説明していきます。
職種を変えたい人も、転職だけでなく、異動によるキャリアチェンジも真剣に考えることをおすすめします。

早速、異動するために重要な戦略・コツについて紹介していきます。
人事異動の仕組みを把握する
まず、最初にやるべきことは会社の人事の仕組み・プロセスを正確に把握することです。
要するに、異動は誰が・いつ・どこで(どんな会議体で)・どのように決めるのか、ということを正確に把握する作業です。
会社によって違いはありますが、一般的に人事は以下の流れで決まっていきます。
step
1部門・部署の構成が決まる
まずは、組織の「形」が決まります。
step
2部門・部署長の人事が決まる
次に、組織の「トップ」が決まります。
つまり、部長・課長などのマネジメント職が決定します。
step
3部員の人事が決まる
最後に決まるのは、マネジメント職以下の一般人事です。
つまり、マネジメント職ではない一般社員の人事が決まるのは最後の最後です。
異動戦略に重要な三つの部門
人事異動を成功させるために、組織内の情報収集は不可欠です。
一般的には次の三つの部門について押さえるとよいでしょう。
ココがポイント
現在の所属部署
希望先の部署
人事部
最終的には、この三つの部門の合議によって人事異動は決定することが多いです。
そして、希望部署への人事異動を実現するためには、それぞれの部署に根回しが必要になってきます。
根回しによって下記の状況を作り出すことが、人事異動成功のゴールイメージです。
ココがポイント
希望先の部署には・・・
・欲しいと思わせる
現在の部署には・・・
・手放してもよいと思わせる
・または手放さざるを得ない事情を作る
人事部には・・・
・Noと言わせないようにする
機械的に部門をローテーションさせる場合は別として、基本的には現場である部署間での合意形成が先で、最終的に人事が承認するという流れが一般的だと思います。
そして、希望先の部署に異動するためには、希望先の部署長にあなたのことをいかに欲しいと思わせるのかががファースト・ミッションになります。
要するに「引き抜き」をしてもらうことになりますので、自分を引き抜くことがいかにメリットがあるかということを明確化して、希望先の部署長を味方につけるのがまず真っ先に行うべきことです。
なかなか異動できない人の共通点
希望先の部署の部長や課長には「欲しい」と思ってもらえたことで、異動できることを期待していたのに実際は異動できないというのが、もっともよくありがちなケースです。
しかし私に言われれば、希望先に「欲しい」を思わせるのは異動戦略においては最も難易度の低いものであり、ただスタート地点に立っているレベルの話です。
むしろ、「欲しい」と思ってもらってからの立ち回りの方が難易度が高く、そこに「人事異動戦略」の肝があります。

人事異動のキーマンを特定する
まずは、人事異動の決定の鍵を握る「部門・部署」について確認しました。
次の作業は、人事異動におけるキーマン、すわなち人事異動の”事実上の”決済権を握る人物の特定です。
ここが最も重要なポイントになります。
中小企業の場合は、比較的キーマンを特定しやすいですが、大企業の場合だと組織も複雑ですし、年々部長職が入れ替わったりし組織間のパワーバランスが変わっていくので、正確に捉える作業が難しいです。
ココがポイント
組織間のパワーバランスの把握
・希望部署と既存部署の部課長はどちらがパワーがあるか?
・人事部の決済権はどれくらい強いか?
ヒエラルキーバランスの把握
・それぞれの部署でキーマンになるのは現場に近い課長なのか、それとも部長・本部長・役員なのか?
・三部門を超越するようなパワーのある取締役はいるか?
営業部門が強い会社など、企業によって部署間のパワーバランスは異なります。
そして、基本的な部署間のパワーバランスは会社の歴史や風土によってあまり変わることはありませんが、人事異動は”部署長個人の人間関係”に大きく依存することがあるので注意が必要です。
たとえば大学時代からの先輩後輩、過去のプロジェクトでお世話になったなど、極めて複雑で個人的な人間関係の集合体で会社は構成されています。
マネジメント職の異動があるたびに情勢は変わり、パワーバランスも流動的になることは心得ておきましょう。

キーマンの心理トリガーを押さえる
キーマンの特定および組織のパワーバランスの把握が完了したら、次のステップとして、何がキーマンの心を動かすのかを特定する作業に入ります。
以下に典型的な人物タイプ・心理トリガーを列挙してみます。
典型的なタイプ別の心理トリガー
「正義」を貫くリーダータイプ
個人の人間関係よりも、会社の発展に必要なことを重視
「義理」を重視する人間関係重視派
成すべきことよりも人間関係の調和を優先。最も多い印象。
「前例」を重視する事なかれ主義者
新しい取り組みよりも、前例を踏襲したいタイプ。人事に多い印象。
「革新」的な人でありたい変わり者
新しい取り組みや、やる気がある人間が好き。実際は「新しいことも許容できる自分」が好きな事が多い。
「部下」思いな兄貴肌タイプ
自分の部下・自分のかつての部下を大事にしたい。裏を返せばそれ以外のつながりだと要注意。
「実利」が好きな損得勘定タイプ
自分に「利益」があるかないかでジャッジする。短期的な損得で判断しがちなので注意。
「上司」絶対のコバンザメ
自分の意志は弱く、長いものに巻かれることにより生息する人。
それぞれタイプ別の心理トリガーに合わせてどのようにアプローチをするべきかが変わります。
キーマンのことを以前から知っていれば上記のことは把握できますが、全く知らない場合はいろいろな人に話を聞きながらどのようなタイプの人間なのか冷静に見極めましょう。
飲み会の有効な使い方
最近は「職場の飲み会は意味ないから行きたくない」というのが一つのトレンドになっています。
私も職場の飲み会はそんなに好きではないのですが、私のような転職者にとっては飲み会は職場の人間関係の把握する絶好のチャンスです。
「○○部の部長と、XX部の部長は、△△案件で揉めて仲がすごく悪い」
「○○部長は、XX課長のことをよく思っていない」
など、飲み会だからこそ聞ける話は結構存在しています。

今の部署で成果をあげる
異動するには、希望している部署に引き抜いてもらう必要があるわけですが、そのためには今の部署で成果を上げておくことが近道になります。
人事異動には「理由」が必要なので、成果を上げているということは、動かす理由になりやすく最終的な人事の承認も得られやすいです。
できるだけ、希望部署の仕事に親和性が高い仕事の領域での成果が望ましいですが、そうでもなくても成果を上げておくことは異動に有利に働きます。
優秀な人間には辞められることは会社としての損失になるので、成果を上げている人の希望は通りやすい傾向にあります。
成果の上げすぎに要注意
成果を上げることは重要ですが、成果を上げすぎると別の問題が起きます。
それは既存部署による囲い込みです。
最初にお伝えしたように、基本的には人事というのは部署間の部員というコマの奪い合いです。
いいコマは手元においておきたいのは自然の摂理です。
成果を上げつつ、囲い込まれない方法はいくつかありますが、「手なづけやすい」と思われないこともその一つです。
成果は上げているが「自分たちの手に負えない」「少し扱いにくい」「持て余す」という位の人間関係を保っておくことが人事異動に繋げやすいです。

大義名分を掲げる
特にキーマンが、会社の発展に必要なことを重視する「正義」を貫くリーダータイプの人間の場合に、絶大な効力を発揮します。
つまり、「自分が希望部署に異動することが、会社の利益の観点から最も理にかなっている」ということを示すのです。
重要なのは、異動したいという極めて個人的な理由を全面に出すことなく、会社の発展・会社の利益という全体視点での必要性を説くことにあります。
仮にキーマンが会社の発展を第一に考えるようなタイプでなくても、人事異動は合議制で決まるので、最終的に反論を封じ込めるためにも「会社の利益」という大義名分を用意しておくことは重要です。
提案資料にまとめる
さまざまな人間関係の人に短い時間で正確に意図を伝えるために、私はプレゼン資料を作ることもあります。
もちろん、タイトルは”私が異動したい理由”ではありません。
先程触れたように、”個”を主張せずに、あくまで”会社全体”の話にすることがポイントです。
現状課題を提示し、希望部署でどのようなことをすることが会社の利益につながるか提言する資料です。

人事異動の妨害を防ぐ
人事異動は全員がハッピーになるとは限りません。
人事異動を進めようとすると、誰かが反対に回ったり、妨害されたりすることの方がむしろ一般的と言えるでしょう。
そのため、最初から妨害をされることを想定し、妨害される要素を排除する準備をしていおく必要があります。
それぞれの部署に反対する理由があります。
現在の部署
真っ先に反対するのは既存部署です。
特に他部署が引き抜きたくなるような優秀なコマは簡単に手放さそうとは思いません。
既存部署や上司が考えているのは「あなたの幸せ」ではなく部署全体の成果です。
繰り返しになりますが、人事異動は部署間の部員(コマ)の奪い合いなので、戦力はできるだけ手元においておきたいのです。
そして、仮に人材を放出するとしても、見返りとしてそれなりの代替人員などを求めるのが自然の摂理です。
人事部
人事部も反対する可能性があります。
会社によって「人事異動の周期はだいたい何年」など決まっており、人事異動させる人員候補というものがリスト化されていることもあります。
今回のような戦略的な「異動活動」では、その候補者リストに上がっている人を出し抜いて異動することになるので、人事からすると前例や慣習を鑑みたときに反対に回る可能性があります。
特に、人事部門のキーマンが前例を踏襲したい事なかれ主義者の場合、注意が必要です。
希望部署
希望する部署も反対する可能性があります。
よくあるのは直属の上司になる課長は「欲しい」と言ってくれているのに、その上司の部長が難色を示すというケース。
直属の上司は部下一人ひとりのパフォーマンスが自分の成果・評価に直結するので、やる気があり能力も期待できる人材はぜひとも欲しいと思ってくれやすいものです。
一方で、部長は数多くの部員を抱えているので、一人ひとりのパフォーマンスよりも全体最適を考えます。
人事異動は部署間のコマの奪い合いですので、他の部署から人を引き抜く、ということは他部署に対する借りをつくることになりかねません。
そのため、人によっては他部門から人を引き抜くという、波風を立てる行為を嫌う人もいます。
どうやって障害要因を潰すのか?
それぞれのキーマンのタイプや組織のパワーバランスによって異なりますが、私が行っているのは大きく2つのアプローチです。
ココがポイント
大義名分を一貫して主張する
一つは、大義名分を掲げて一貫して「会社の利益」を主張し続けること。
反対派の個人的な理由、自己の利益、前例主義という日和見的な態度を、大義名分を掲げて「会社の利益」を盾に真正面からぶっ潰していく正攻法です。
シンプルですが効果的です。
そして、小賢しい反対派をなぎ倒すのが気持ちが良いというオマケもあります。
半沢直樹のカタルシスに近い気持ちよさがありますので、ぜひ経験をしてもらいたいです。
ココがポイント
大物を味方につける
もう一つの方法は、反対している人を特定し、その人を黙らせることのできる大物を味方につけて、説得させるという根回し戦略です。
そんな大物を動かすことが本当にできるのかと思うかもしれませんが、あなたの「人事異動」に心から賛成してくれている部署長職の人に仲介してもらうと意外とできるものです。
そのときにも「大義名分」をしっかり掲げて、大物を見方につけることが重要なポイントになります。
大々的に「異動活動」はしない
さて、ここまで戦略的人事異動のためのやるべきことをお伝えしてきました。
一方で、やってはいけないことがあります。
それは、「異動活動」を行っていることを周囲に言うこと、つまり、異動活動は秘密裏に行うことが非常に重要です。
人事は基本的にデリケートなことなので、先ほどから触れているように反対する人も出てきます。
話が熟す前に、反対派にあなたの動きを察知されると異動話を握りつぶされる可能性があります。
「異動したい」と周囲に言っている
今の上司に異動の相談をしている
社内公募制度・FA制度を利用している
この記事の冒頭で「こんな人は要注意」と指摘したのはこのためです。
もちろん、時と場合によっては、「異動したい」と周囲にいうこと、上司に相談すること、社内公募制度が人事異動に有効に働くこともあるでしょう。
ただし、同時に反対派に察知され、話を事前に潰されるリスクがあることは頭に入れておいた方がいいでしょう。
特に、所属している部門の上司にまず相談する、という人もいると思います。
口では「あなたのキャリアのために応援する」と言ってくれても、マネジメント職の仕事の優先順位は個人の希望を通すことではなく「部署の最適化」です。
それは個人的な人間感情の問題ではなく、部署長としての役割であり、部署長としての責任なので、部署長を責めることではありません。
社内公募は使えるのか?
会社によっては、「自己申告制度」「社内公募制度」「社内FA(フリーエージェント)制度」を設けている場合があり、有効に働く可能性があります。
ただし、私に言わせればこれらの制度はメリットよりデメリットの方が大きいです。
よく「自分の所属部門に情報が伝わることはありません」などと言われることもありますが、人事情報は残念ながらたいていどこの会社でも伝え漏れるものです。
また、自分が全く知らない希望部署の部署長クラスとと接点が持てる可能性があるというのは一つのメリットではありますが、このような「会社の制度」を利用するのではなく、社内の人から紹介してもらい接点を持つほうが圧倒的に効果的です。
一方で、反対意見を黙らせることができる可能性があるので、希望部署に「欲しい」と思わせたあとに「通行手形的」に権利を行使するという戦略はあり得ると思います。
たとえば、囲い込みをしてくる既存部署の上司の人事パワーが強すぎる場合には、会社のルールを盾に突破することができるかもしれません。
また、借りを作りたくない希望先の部署長がいる場合には、「引き抜いたのでなく、応募者が勝手にやってきた」という理由を作って上げることが、役に立つこともあります。
このようにそれぞれの立場を理解し、落とし所をうまくコーディネートすることが「異動戦略」においては重要になります。

人事異動の裏技
ここまでは正攻法ですが、以下の方法は必ずしもおすすめしませんが場合によっては有効に働く場合もあります。
体調不良を訴える
これはマイナス評価に繋がる可能性もありますし、今の部署から異動する理由にはなりますが、希望部署に異動する理由は別に作り出す必要があります。
本当に体調が優れないのであればこのアプローチもありますが、でっち上げるのであればフェアではありません。
家族事情を訴える
子育て、介護などを理由に部署異動を訴えるケースです。
会社によっては出張・土日出勤対応が多い営業職などから、内勤職に異動したいなどが例として挙げられます。
ただし、同じく今の部署から異動する理由にはなりますが、希望部署に異動する理由は別に作り出す必要があります。
転職すると伝える
いわゆる、転職カードを切る戦略です。
いくら人事異動をしたいと訴えても実現しなかったのに、「転職する」と伝えると異動先の候補を提示して人事部が退職を引き止めにかかるというのは幾度となく聞いたことがあります。
私も前職を辞める時、人事から複数の他部署への人事異動を打診されました。
魅力的なオファーもありましたが、私は個人的に転職カードを切る交渉というのが自分のポリシーに合わないので、後ろ髪を引かれながらも断った思い出があります。
おすすめ書籍
人事異動を戦略的に解説した本はほとんど見かけませんが、一冊超絶におすすめできる書籍があります。
おおすめ必読書
この本は歴史からの学びをどうのように現代の仕事・生活に生かしていくのかがテーマの非常に面白い本です。
この本の中で、「石田三成」を引き合いにどのように組織の中でプロジェクトやムーブメントを作るのかが紹介されているのですが、人事異動においても非常に参考になる点が多いです。
当時の体制を現代の企業に照らし合わせると、「徳川家康」は副社長であり、「石田三成」は平取締に過ぎず、当時のヒエラルキー社会において、権力・財力など、パワーバランスは到底対等とは言えるものではありません。
結果的には「石田三成」は負けてしまいましたが、そもそも対決ムードまで持っていったことが自体が既にものすごいことなのです。
人事異動に限らず、組織をどのように動かすか、プロジェクトをどう立ち上げるかという点で、サラリーマンであれば絶対に読んでおいて損はない傑作です。
異動活動と転職活動の併用
異動交渉の際に、転職カードを切ることは個人的にはおすすめしませんが、転職活動の準備自体は勧めておくのはありだと思います。
少なくとも、最低限自分の市場価値は把握しておくことをおすすめします。
自分の市場価値を把握し転職できるオプションを心の中で持っておくことは心に余裕が生まれ、人事異動の交渉の際にもプラスに働く可能性が高いです。
自分の市場価値を知りたいのであれば、転職エージェントに面談にいくことが一番効率的だと思いますが、簡易に行うことのできるMIIDAS(ミイダス) もおすすめです。
転職エージェントのパーソルが運営しているサービスで、無料で市場価値診断を行うことが可能です。
だいたい5分から10分でざっくりとした自分の市場価値の相場を押さえることができるので非常に便利です。
精神的にも余裕を持った「異動活動」を行うためにも、自分の市場価値と採用マーケット動向を押さえておくのもいいでしょう。