前回の記事では、海外赴任・駐在員の高水準の給料のリアルな実態を紹介しました。
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海外駐在員の給料・手当の平均相場|高年収サラリーマンの給与事情
このサイトの大きなテーマでもある「年収をアップさせる」転職。 このテーマにおいて避けて通れないのが、海外赴任・海外駐在員という選択肢です。 キャリアチェンジをしながら転職を重ねる中で、周囲に海外赴任経 ...
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このサイトのコンセプトの「やりたい仕事」をしながら「年収をアップさせる」転職を考える上で、大幅な年収アップが期待できる海外駐在は戦略的に狙うべき一つのキャリアパスと言えるでしょう。
一方で、前回は海外赴任・駐在の給与面のいいことばかりを紹介しましたので、今回は気をつけるべき点、事前に知っておくべき点についても紹介しておきたいと思います。
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海外駐在員は給与が大幅アップ
まずは、簡単に前回の話を振り返ります。
海外赴任・海外駐在員は海外での勤務経験という実績・スキルを磨くことで長期的なキャリアアップが期待できるのはもちろんのこと、短期的な「給料アップ」という視点からみても非常に魅力的です。
海外駐在のリアル年収事情
日本在籍時の年収
額面年収:1000万円
手取り年収:750万円
海外駐在時の年収
額面年収:1300万円(1.3倍)
手取り年収:1300万円(1.7倍)
業界・企業、そして赴任する地域によってもちろん大きく異なりますが、私が知る限りでは、おおよそ額面の給与で1.2倍~1.5倍程度、手取りで1.5倍~2倍位の給与になるケースが多いようです。
手当が増えるだけでなく、所得税・住民税の納付義務がなくなり、海外の所得税などは会社が肩代わりしてくれることが多いため実質税金支払いゼロになるので手取り年収が増えます。

海外駐在のお金に関する注意点
これだけ聞くと海外駐在は文句なしに素晴らしいと思ってしまいますが、注意点もあります。
ここからは海外駐在を目指すにあたっての、“金銭面”における事前に知っておくべき注意点を紹介していきます。
配偶者(駐在妻)は海外で仕事ができないことが多い
海外駐在をするときに結婚している方は、配偶者を帯同することが多いです。
夫が海外駐在員になり、ついていく妻のことを駐在妻、略して「駐妻(ちゅうづま)」と言ったりします。
共働きの場合、国内の転勤とはわけが違うので、ほとんどの場合退職することとなります。
夫の収入が増えても、妻の収入が減ることを考慮すると、トータルの世帯の収入で考えると必ずしも得にならないケースもでてきます。
「今の仕事は辞めるとして、海外で仕事をすることはできないか?」
と考える人もいるかもしれませんが、完全に無理ではありませんが超えなければならないハードルが数多くあり、ほとんどの場合専業主婦になる「駐妻」が多いです。

ビザの関係で働くことができない
海外からやってきた人が働くということは、その国の「働き口」を一つその国に住んでいる人たちから奪うことになります。
そのため、実は海外で働くということ自体、思ったほど簡単なことではありません。
駐在妻の場合、基本的には、家族帯同ビザというもので海外赴任をすることになります。
そして、家族帯同ビザは就労ビザではないので国によっては就労が認められない場合があります。
駐在妻が働くことを夫の会社が敬遠する
前回の記事でも触れましたが、駐在妻である家族も含めて海外駐在は手厚い手当を受けています。
そのため、帯同家族である駐在妻がそもそも働くことを推奨していない、禁止していることがあります。
また。仮にOKが出た場合でも働く場合は手厚い手当がすべてなくなることもあり、そうなるとそもそも働くこと自体を躊躇することになります。
また、企業は「家族の安全」を第一に考えていることもあり、なかなか柔軟に対応してもらえないケースも多いです。
子供の養育費にお金がかかる
基本的には、子供の養育手当が企業から支給されます。
ただし「子供の教育」はどこの家庭もプライオリティが高いので、教育補助以上の教育をさせたくなる親が実際に多いようです。
「せっかく海外にいるのだから」と欧米系の金額の高いインターナショナルに入学を検討したり、日本語の教育を補うために日本から高い送料をかけてでも教育教材を手配したり、塾や習い事にお金をかけたりと教育費用が日本にいるときよりも増えてしまうケースが多いようです。
児童手当・医療費助成がない
子供も国内から住民票を抜くことになりますが、その場合は日本で受給していた児童手当は当然もらえなくなります。
これは、国内に住民税を納めていないので致し方ないですが、子供が複数人いる場合はそれなりの損失になりますので、頭の隅においておきましょう。
ちなみに東京都内など住んでいる地域によって、乳幼児医療費助成制度(マル乳)、義務教育就学児医療費助成制度(マル子)により、中学卒業まで子供の医療費が無料になることがあるかと思いますが、この資格も失います。
ただし、海外赴任は海外永住ではないので、多くの人は社会保険料はそのまま支払い続けることが一般的なので、病院にかかっても3割負担では済むようになっているので、医療費が全額負担になるわけではありません。

株取引など資産運用がしにくい
日本で証券会社に口座を持ち、株や投資信託などの資産運用をしていた方は要注意です。
基本的に、日本の証券会社の口座は、日本に住民票がある日本の居住者向けのサービスとなっています。
そのため海外に出ると日本のように自由に、資産運用をすることができません。
証券会社の口座によっては、口座の保持自体もできなくなることもあるので、海外赴任の前に各証券会社のルールを確認しておくべきでしょう。
ちなみに株取引で得た収益の納税に関するルールも赴任国によってまちまちで、なかなかまとまった情報が手に入りづらいのが実情です。
旅行や余暇費用が増える
「せっかく海外に住んでいるのだから今のうちに旅行しておこう」
「子どもたちにいろいろな経験をさせてあげよう」
日本にいたら行きにくい場所など、海外に住んでいるからこそ行きやすい国を中心に海外旅行などが増える家庭が多いようです。
単身赴任をしていた私の友人は、暇なので毎週ゴルフに行っていると言っていました。
一般的に、日本にいるときよりも旅行や余暇費用の出費が多くなりがちであることも注意した方がいいでしょう。
海外駐在は家族問題でもある
海外駐在は個人のキャリアの観点では非常に魅力的なオプションの一つです。
一方で、紹介してきたとおり、キャリア以外に大きな決断を迫られることが多いのも事実。
特に家族同伴で海外駐在を検討している人はなおさらです。
結婚していれば配偶者のことや、子供の教育面のことも考える必要があります。
仮に結婚していなくても、自分自身の結婚のことを考えて海外赴任の決断を悩む人もいます。
私の友人の一人は海外赴任前に結婚相手を見つけたいので海外赴任の話を断り続けていると言っていました。
さらに年齢が上がってくると、自分の親の体調・介護などの問題も関わってきて、自分自身のキャリアだけではない選択を迫られることになります。
そもそも、全員に訪れるチャンスではありませんし、チャンスが回ってきても自分自身の人生のタイミングによってはそのチャンスを辞退する可能性もあります。

海外駐在と現地採用という働き方
今回の記事は、海外赴任・海外駐在員についての話です。
一方で、海外で働くのは日本本社から派遣される海外赴任・海外駐在という働き方以外に、「現地採用」という働き方があります。
こちらは、同じ会社で仕事をしていてもまったく環境が異なるので、詳細はこちらをご覧ください。
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現地採用と海外駐在の違いとメリット|給料・待遇格差の現実
海外赴任・海外駐在員は、年収アップの非常に有力な選択肢になることをお伝えしてきました。 前回の記事でお伝えしたとおり、海外駐在員になると額面年収1.5倍、手取年収だと2倍くらいになることもあり、年収面 ...
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海外赴任・海外駐在員を目指す転職戦略
海外赴任をする人材は、誰しも英語がペラペラというイメージがある方もいらっしゃるかもしれませんが、意外とそうでもないことがあります。
私の友人の一人は海外赴任になりましたが、海外赴任決定時には必要な語学力が全くない状態でした。
それでも企業が語学学校の費用を負担してくれて、給料をもらいながら語学を習得し、そのまま海外赴任をするというなんとも羨ましい経験をしていました。
つまり、「語学留学経験もないし英語もしゃべれないから、自分には海外赴任は無理」ということはありません。
どうやったら、海外赴任をすることができるのか?ということについての考察、海外駐在員を目指す転職戦略についても別途まとめたいと思います。
海外駐在員がサラリーマン最強
私自身は独立する気はなく、会社内で出世をしていつかは役員を目指したい、ということに興味がありません。
そうなると、「海外駐在員」というポジションは、「やりたいことをしながら、年収アップ」させるという点において非常に有力な選択肢になると思っています。
日本のサラリーマンで年収1000万円の人はいても、年収2000万クラスになるとそうそういるものではありません。
投資銀行などの一部の高収入職種と企業の役員レベル位でしょうか。
それが「海外駐在員」であれば、年収2000万円クラス=手取り年収1250万円程度は、十分に狙える水準です。
さらにいえば、日本は「英語で仕事ができる人材」は限られているので、一度「海外駐在員」としてのキャリアを積むとその後のキャリアも一気に広がります。
「年収を上げたい人」は、真剣に海外駐在員のキャリアについて考えてみることをおすすめします。