これまで読んできた数十冊のキャリアに関する書籍の中から、私自身のキャリア構築に大きな影響を与えたおすすめ書籍を紹介しています。
今回紹介するのは、富士フィルム、サイバーエージェント、リクルートなどで勤務経験のある木暮太一さんの書籍「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」です。
この本を手にとったのは、まさに馬車馬のように働いていた時期でまさに「いつまでこんな働き方を続けるのか?」と自問自答したときでした。
こんな方におすすめ
- どうやって高い給料がもらえる仕事が知りたい
- 残業が多く”しんどい働き方”を変えたい
- 幸せな働き方について考えたい

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Contents
資本主義とキャリアの関係
この本はキャリア・働き方に関する書籍ですが、資本主義という社会システムをベースに説明している点がユニークです。
資本主義に関する本は、定期的にヒットをしています。
有名なところでは「金持ち父さん・貧乏父さん」やトマ・ピケティの「21世紀の資本」が上げられます。
しかし、基本的にキャリアに関する本ではないため、労働ではなく投資を推奨する話だったり、国家政策の話だったり、どちらかというと「労働」に対して否定的な印象を持つような書籍が多いです。
この本が面白いのは、資本主義をベースに、あくまで仕事・キャリアをテーマにしているところです。
私達が資本主義というシステムの中で生きていく上で、どのように働くことで、給料をあげことができるのか、幸せに仕事をすることができるのかについての提言がされています。

年収をどのように上げるのか?
冒頭は、こんな文章からはじまります。
みなさんは、いまの自分の働き方に満足していますか?
みなさんは、いまのその働き方をずっと続けていきたいと思っていますか?
この書籍で著者が大きな課題として設定しているのは”しんどい”働き方をせずに、高い給料をもらうにはどうしたらよいか?ということです。
どんなやり方でも年収を上げればよいということではなく、あくまで”しんどい”ラットレースのような精神的苦痛を伴う働き方をせずに高収入を得るにはどうしたらいいのか、という点が論点となっています。

給料はどうやって決まるのか?
Pick UP
・給料の金額は「努力の量」によって決まっていない
・給料の金額は、「成果」によって決まっているわけでもない
「給料と努力の量は関係ない」まではよく聞く話ですが、「成果も関係ない」というのは、面白い視点です。
この本では、いかに成果を上げたかという視点は、給料を決める決定的な要因にならないことが多いと指摘しています。(保険会社のような完全成果主義型の会社は除く)
多くの日本の会社において、仮に利益を2倍あげても給料は2倍になることはないのは、実はおかしい事ではなく、給料が決定する仕組みがそもそも「成果」に紐付いていないことが理由であると指摘しています。
「なんで自分はこんなに成果を上げているのに、何もしていない年配者の方が給料が高いのか?」ということを特に若いうちは思うこともあるかもしれませんが、それは給料の仕組みを理解していないだけということになります。
「労働力の価値」を決めるもの
この本の中において”価値”というのは非常に重要なキーワードです。
マルクスの資本論をベースに、2つの価値があると説明されています。
ポイント
【1】使用価値・・・有益・役に立つという意味での価値
【2】価値・・・それを作るのにどれだけ手間暇がかかったかという意味での価値
私はこの本を読むまで、キャリアにおける市場価値を語るときに「使用価値」のことをイメージしていました。
つまり、どれだけ有能か、役に立つ=利益を生み出せるか、ということを市場価値と捉えていたのです。
この本では労働市場における市場価値は「どれだけ時間や労力をかけて今の状態になったか」という「価値」によって決まると結論づけています。

年収が上がる努力と上がらない努力
Pick UP
・多くの人は努力の方向性を間違えている
・毎月のノルマを必死に達成しても、それが「積み上げ」になっていなければ労働力の価値はあがらない。
・通常の残業やノルマを達成して頑張っているのは、目の前の結果に大してであり「あとに残らない努力」である
これは責任感の強い真面目な人ほど要注意です。
必死に残業して長時間働いていても、中長期的なキャリアアップに必ずしもつながらない可能性がある。
自分の今後のキャリアアップにつながる「あとに残る努力」をすることが重要です。
労働力を消費と投資の違い
Pick UP
・労働力の価値を積み上げるには、「自分の労働力を消費せずに投資する」という考え方が必要
・自分の労働力を投資できる仕事とは、その経験が「将来の土台を作る仕事」
現実的には、労働力を消費する仕事が多いはずです。
というのも、企業側からの視点で見れば労働力を消費することで、会社の利益に貢献してもらうことが最も重要だからです。
企業は学校ではないので、労働力の投資による社員の成長よりも、労働力の消費による短期的な売上・利益への貢献の方が、優先されるのは当然でしょう。
自分の仕事時間の100%を「労働力の投資」となる仕事に当てることは不可能で、いかに「消費」の比率を「投資」の時間に拡大できるかと考えるのが現実的なアプローチです。
そのためには、「労働力を投資する」という意識が重要です。
何も考えずに働いていると「労働力の消費」となってしまうところ、一工夫をすることにより「投資」に変えていくという発想が現実的な解決策だと思います。
私は常に目の前の「労働力の消費」が求められる仕事を、どうやってより「労働力の投資」に変えることができるか、この仕事を通して新しい知識・スキル・経験を最大化できるかということを意識しています。

将来のために積み上げる仕事
Pick UP
・労働力の価値は、積み上げによってのみ変えることができる
・労働力の価値には、知識や経験、スキルなど「積み上げてきたもの」も反映される
結局は、即効性のある解決策ではなく、長い時間をかけて「積み上げる」ことの重要性が説かれています。
オワコンの業界にチャンスあり
Pick UP
・「賞味期限が長い知識・経験」を身につけるために変化のスピードが遅い業界・職種をあえて選ぶ
・労働力の価値を積み上げたいのであれば、「知識」「技術」「ノウハウ」などの移り変わりが少なく、「積み上げ」をしやすい仕事を選ぶべき
変化する時代に合わせて、自分もアップデートすべきという一般的なキャリア論とは真逆の提言であり新鮮でした。
普通は、今後伸びていく・発展性のある業界や企業を選ぶべきと言われることが多いですが、それは「積み上げ」が効きづらく、ラットレースになると警鐘を鳴らしています。
流行やトレンドの移り変わりが激しい業界として、著者は、携帯ショップやインターネット業界を、要注意業界としてあげています。
新潮流の方にどんどん追いついていかなくはならないと無意識に思っていましたが、実は一歩引いて個人の幸せ・ライフワークバランスまで考えると、一部ではオワコンと言われることもある旧来型の産業も実は狙い目なのかもしれません。

40代以降の転職・キャリアを考える
この本が発売されたのは2012年なので7年前の書籍になりますが、未だに考えさせられ続けていることがあります。
それは、どこまで自分のキャリアの幅を拡大していくかということです。
マーケティングという職種の醍醐味の一つに、いろいろな産業や商品・サービスの仕事に携われるということがあります。
ただし、それゆえ新しい産業・商品・サービスの仕事を行う時は、一から新しいことを短期間で学習することになるので「知的好奇心を満たされる」一方で、見方を変えればラットレース的な働き方とも言えます。
もうすぐ40代が見えてきた時にふと思うのです。
いつまでこんな働き方を続けるんだろうかと。
ある程度の年齢に突入したら、自分の好きな業界や商品に絞った方がいいのではないか。
ということを最近思い始めています。
キャリアを考え直す
最後にこの本の最終章にある印象的なフレーズを2つ紹介しましょう。
・資産を作る仕事を、今日はどれだけやったか?
・人は、1年でできることを過大評価し、10年でできることを過小評価する
この書籍では一貫して、年収をあげるための小手先のテクニックではなく、中長期的な視点にたってキャリア構築の重要性を説いています。
時代の変化が激しい状況の中で、常に情報感度を高くし最新トレンドを自分にアップデートをすることが求められることが多くなってきています。
その事自体は否定できませんが、
実は別の生き方もあるのではないか?
人間としての幸福度の観点だけでなく、実はその方が年収を上げることもできる可能性があるのでは?
という新しい視点を与えてくれたキャリアを考える上での良い書籍でした。
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